medel

服を愛でる、服を着た自分が愛おしくなるーーそんな願いが込められた、アパレルブランド「medel」。デザイナーの千葉聖夏さんは、OEMの会社に勤めていた際に売れる服づくりに違和感を感じ、「着る人に思いをはせた服をつくりたい」と思いを抱くようになりました。

会社員としてデザイナーを経て、2017年に自身のブランドを立ち上げた千葉さん。medel 立ち上げの経緯や服づくりへのこだわりをお聞きしました。

服は、自分の心が踊るものであってほしいa

千葉さんは、幼い頃から挿絵画家かデザイナーになりたいという夢を抱いていました。美術大学を中退。アパレル販売員として働き、アパレルの世界に少しずつ関わっていきました。日々現場に立って、お客様一人ひとりに接する中で「寒いからコートを買う」というように、ニーズや目的を持って購入しにお店に訪れるお客様が多くいました。そんな中で千葉さんは「洋服に対する価値観に疑問を持つことが多々ありました」と当時を振り返ります。

洋服のお買い物にいくことは、何か探しているという目的を持ったお買い物でなく、自分がこれだと思った洋服を見つけたときは、理由もなく欲しくなる“惚れる”というような感覚に近いのではないかと話します。「お買い物していて『どうやって着ようか』とか『いつ着てお出かけしよう

か』と思いを巡らせる洋服に出会えると、自然と自分がハッピーな気持ちになっていると思うんです」。洋服は手にとる一人ひとりにとって、心が躍るようなものであってほしいと、販売員の仕事を通して感じていました。

そうこうしているうちに、考えて悶々としているよりは「自分で洋服をつくってみればいいのではないか」という考えに辿りつきました。そして販売員を辞め、21歳でアパレル関連のOEMの会社に転職しました。

未経験でデザイナーの道へ

転職した会社は、ドメスティックブランドの立ち上げ期でした。そこでは、アシスタントとして洋服づくりの一歩を踏み出しましたが、入社からわずか半年で会社が倒産する事態に陥りました。会社からの提案で、アシスタントではなく生産管理の職種で会社に残る選択肢はあったものの、「洋服をつくりたい」という意志が固かった千葉さんは、再び転職を決意。アシスタント募集をしていた会社に入社しました。

ところが今度は、入社した途端にメインデザイナーが3日で退職する事態に……。そこでいきなり「社内にデザイナーがいなくなるということは、窮地ですよね(笑)。展示会も控えていたので、洋服をつくらなければならない。やらざるを得ない状況になって。それで、私がデザイナーとして仕事をすることになったんです」。

未経験からいきなりデザイナーとなり、デザインのイロハもわからない中、日々の仕事を必死にこなしていきながら覚えていったという千葉さん。「とにかく何でも聞いていましたね。ニットなどの編み方が多数ある中で、『そもそも“リブ”ってなんのことですか?』と用語一つもわからなくて。段ボールをパッキンと言うなんて知らないぐらいに知識も経験も不足していました(笑)」。

懸命に学びながらデザインをする繰り返しで、「ものすごいスピードでデザイナーとしての経験を積んでいた」と話す千葉さん。社内にいるパタンナーとのコミュニケーションも多く、デザイナーとして明確に「こうしたい」というものがあれば洋服をつくっていけると学んだといいます。

”売れるものをつくる”ことの違和感

ピンチを乗り越え、デザイナーとして経験を積みながら、日々充実した服づくりを行っていたという千葉さん。洋服づくりを楽しんでいたものの、会社の成長とともに店舗数が増えていき、次第に売上につながる服をつくることを求められるようになっていきました。こうした流れに「ものづくりの幅が狭くなっていくような気がした」と千葉さんはいいます。売れるものをつくらなければならない状況に、不安や洋服づくりへの違和感を抱くようになっていきました。

当時はファッション雑誌の売れ行きが低迷し、洋服の販売も伸び悩み始めていた時期で、ファストファッションが流行し始めたときでした。安価で売れるものをつくらないと、生き残っていくことが厳しい時代に入り、百貨店などに出店するブランドから顧客の足が遠のくという状況が生まれていました。千葉さんは寂しさと同時に「人々の手が届く価格で、しっかりと思いが込められている服を届けたい」と思うようになったといいます。

そうこうしているうちに、「自分でブランドを立ち上げてみたらどうか?」と声をかけてくれる人たちが現れていきました。その後、知人の会社で新規ブランド立ち上げのお手伝いをする機会にも恵まれ、非常にタイトな製作スケジュールの中でも、服をつくり上げてきたという実績の積み重ねが、千葉さんにとって少しずつ自信になっていったようです。

約6年程、会社でデザイナーとして経験を積み、2017年に独立して「medel」を立ち上げました。

コンセプトは「愛でる」。モダニティが溶け込んだ、女性らしい服

「洋服を購入してくださった方が、着たあとのストーリーに思いを巡らせてハッピーな気持ちになったり、着ている自分を愛せたり、洋服そのものを大切にしたり。値段が高い低いということではなく、服を純粋に楽しんでもらえるブランドにしたくて立ち上げました」と話す千葉さん。

洋服も、洋服を着ている自分も愛することができるものを届けることができたら……。そんな思いを込めて、「愛でる」とコンセプトに服づくりを行っています。

デザインのポイントは、「女性らしさ」。基本的にはフリーサイズで製作していて、身体のラインが綺麗に見える洋服の形、女性であることを楽しめるようにと意識しています。モダニティが溶け込んでいて、品が良く抜け感のある洋服が特徴です。

受注生産にこだわる

「余剰在庫をつくらず、セール品は販売しないと決めています」という千葉さんは、洋服を楽しんでもらいたいと思ってつくったものが、余ったりディスカウントされるのは洋服の価値が揺らぐのではないかと危惧しています。そのため、受注生産にこだわっています。

商品は全て発注があってから動き出し、提携工場で一枚一枚丁寧につくられ、発注から2~3週間ほどで購入者のもとに届きます。

ブランドとしても洋服の無駄を防ぐことができ、medelの服に惚れて購入してもらえるお客様のもとに届けることができるので、medelは受注生産にこだわっています。

届けたい服は、他ブランドでも

トレンドだから、売れるからつくるのではなく、服に惚れていてほしいという思いを持ってつくられるmedelの服のデザインは、自社ブランドだけではなく別ブランドでも評価され、生かされています。現在、千葉さんはmedelの展開だけでなく、他ブランドの委託デザイナーとしても活躍中です。

「これまでにない洋服をつくりたいのもありますが、トレンドを追うような服よりも着る人が心地よくなれると思う服をつくりたい」と話す千葉さん。今後は1シーズンに10型を製作できるようにするため、取引先の工場を増やし、つくりたい服をカタチにしてもらうために重要なパタンナーを揃えていこうとしています。

洋服一つひとつから着ている自分が想像できる服は、女性たちの生活を華やかにし、そして自分自身に自信を持てたり、自分を愛せるようになっていく。そんな服を、medelは届けています。

Interviewer Akki/Writer Asuka/Photographer Akki


ーaboveu BUYー