THURIUM

2016年に誕生したファッションブランド「THURIUM(スリウム)」。デザイナーの及川絵美さんは、多くの女性が抱える体型の悩みに対して、体のラインを隠すのではなくきれいに見せることを意識して、気兼ねなく日常で着られる服を提案しています。ブランド展開からわずか4年ですが、女性の悩みに寄り添ったデザイン性の高い服は評判となっています。及川さんは有名アーティストの衣装や某百貨店の制服デザインを手がけるなど、自身のブランドだけでなくデザイナーとして活躍の幅を拡げています。

女性の体のラインをきれいに見せたい。

「THURIUM」というブランド名は、個性的な形で色鮮やかなのが特徴的な南国の花「アンスリウム」からつけられました。花言葉は「情熱」。及川さんは前向きな言葉が素敵であったこと、そしてお花の曲線が美しいと思い、「女性に届ける服のブランド名として魅力的に感じた」といいます。「アン」という言葉は英語では否定語として使用されることもあるため、その言葉を除きスリウムという名にしました。

アンスリウムの花のように、「美しい曲線を使い、女性の身体のラインを綺麗に見せる服つくり」がコンセプト。人の体に沿って型をとることで、きれいなシルエットをつくり出すことが可能な「ドレーピング(立体裁断)」という型紙をつくる方法を採用しています。「最近はオーバーシルエットそのものが人気ありますね。その中でも、生地の端をつまんだりたたんで縫ってできる『タック』を入れるだけで、着心地の変化はそれほどなくてもメリハリができて見え方が変わります」。

曲線を大事に技術を加えて、生地の立体感を出したりデザイン性を高め、体型に馴染む服づくりをしているのが特徴です。

やっぱりデザイナーがいい。

いつかは自分のブランドを持ちたいという夢を抱き、高校卒業後は服飾・ファッションの専門学校である文化服装学院に進学。学ぶ中で「デザイナーになりたいけれど、デザインを学ぶだけでいいのだろうか?」と疑問を抱いたことがあったといいます。そこで、在学中にインターンシップという形で、とあるファッションブランドのアシスタントの経験をしました。

「当初は、ただ『デザイナーってかっこいい、ブランドを始めるってかっこいい』って思っていたんです(笑)。でも実際に携わりながら、デザインするだけではデザイナーになれないんだなって思って。お客様がいくらだったら購入してくださるのか、お客様やクライアントとなる企業のことなど、デザインした先にあることまで考えていかないとブランドの存続は難しいんだという厳しさも学びました」と及川さんは振り返ります。

ファッションショーの裏側で服の仮縫いをして着ている人の体に合うよう調整するフィッターとして仕事を経験するなど、ブランドをつくるために必要なことや関わる人がたくさんいることを肌で感じたことで、より自分のブランドを持ちたいと思うようになっていったといいます。

文化服装学院を卒業後、日本のアパレルブランド「グレースコンチネンタル」に入社した及川さん。最初に経験した販売員の仕事の中で、接客するお客様のさまざまな悩みを聞いてきました。いい服を着たいと感じていても「値段が高い」と購入を躊躇していたり、その時の自分の体型に合わせて着こなせる服がわからなかったり……。悩みを直接聞くにつれ「やっぱりデザイナーとして自らつくる服を通して、お客様の悩みを解決したい」と強く思うようになった及川さんは、退職を決意。特に、体型の変化によって服選びに悩んでいる女性たちが多かったことから、体のラインが美しく見える服をコンセプトに、2016年に「THURIUM」を立ち上げデザイナーとして一歩を踏み出しました。

ストーリーから始まる服づくり。

THURIUMの服は、シーズン毎に物語を考えるところから服づくりが始まります。前職のグレースコンチネンタルで過ごしたことが、THURIUMの服づくりにも影響を与えているようです。「コンセプチュアルな世界観をつくるのが非常に上手なブランドだったと思っています。服を購入するお客様の中には、服を見て購入するというよりも世界観が好きでコンセプトに魅力を感じて購入するリピーターの方が数多くいました」。展開する服のストーリーや思いが伝わるからこそ、人々を魅了しファンができるのかもしれません。

「デザイナーの独りよがりな服にならないよう、物語の登場人物が現実の世界に飛び出してきたかのように、日常的にTHURIUMの服を着て楽しむ姿をイメージしながら、ストーリーを大切にして服づくりをしています」と及川さんはTHURIUMのこだわりを話します。

THURIUMの2020秋冬シーズンのテーマは「ブルタバ」。チェコにあるブルタバ川の川沿いで生活をするボヘミアンという民族のことを思い出したという及川さん。「調べていくとこの民族は放浪しながら生活をしていて、季節によってサテンや妖艶な服を着ていて、とにかく自由に服を楽しんでいる民族だということがわかったんです。そこから、自由奔放な女性像が発想され、秋冬シーズンのTHURIUMの服のテーマにしました」。

THURIUMの服選びが楽しくなるのは、物語だけではありません。テーマに基づいてつけられる洒落のきいた商品名にも注目です。例えば、リバーシブルのウールコートもブルタバ川にかけて「気持ちを込めた“リバー”シブルウールコート」に。テーマやストーリーが少しでも感じられるような名前がつけられています。THURIUMは服を着る自分を想像しながら、服を選ぶ過程も楽しめます。

日常でも着れる、他とはちょっと違う服を。

THURIUMの展開する服は、ストレッチのきいた生地や自宅でも洗濯できる素材を取り入れながら気やすさを追求した服で、手に取りやすい価格に設定して展開しているため、日常的に着ることができるものであることも魅力です。

及川さんは、「どんなにいい服だと思ってもらえても、着てもらえなければ意味がないと思っています」と強調します。「スペシャルな服というのもいいとは思いますが、購入したけど着られなくなってそのままになっていたり、どんなときに着ていいのかわからずに着ていないという人たちがたくさんいます。他の服とはちょっと違う個性のある服、それでいて普段から着て世の中に溶け込めそうな服というのを意識的につくっています」。

特別感はあるけれど日常的に女性たちが着ることができる服を実現しているTHURIUM。リピーターとなっている人たちは、大体約20,000円から30,000円くらいの服を購入しているといいます。

「購入する方たちが感じる価格の高い、安いは人それぞれだと思っていて。ファストファッションなど安価な価格で購入してきた人にとってみると、価格が高いと感じる方もいます。それでもお客様の中には、それまでTHURIUMのような服の価格を高いと感じていた方が1着購入してみて『自分の持っている服と合わせやすかった』と喜んでくださりリピーターになってくださる方がが増えていて。素直に嬉しいなと思っています」。スペシャルな服を日頃から楽しんでほしいので、デザインを『やりすぎない』ことで少しでも手に取ってもらいやすい価格に抑えることができています。

価格によって服を選ぶというよりは、THURIUMの服に魅力を感じて普段から使える服として選んでもらえたこと、そして本人が着やすいと楽しんでくれていることに喜びを感じながら、及川さんは女性たちの毎日を華やかにしてくれる服を提案しています。

他ブランドの立ち上げやデザイナーとしても活躍中。

ブランドを立ち上げたいという思いが強くなり、アパレルブランドを退職して「見切り発車でブランドを始めてしまい、思った以上に費用がかかることに驚いた」と当時を振り返る及川さん。それまで貯金してきた100万円で立ち上げの準備を進めていくと、会社設立の手続きにかかる費用や生地の購入代、展示会に出展するためのサンプル製作の費用などがかかりました。

「展示会の出展となると、会場を借りたりするなどして大体120万円くらい必要で。さらに発表するために服のサンプル製作をするわけですが、サンプル代って量産時に製作する服の3倍くらいのコストがかかるんです。工場が通常5,000円で仕上げられるものが、サンプルだと15,000円になります。量産時と異なるので、1着が高くなるわけです。だから、100万円って一瞬でなくなるんですよね(笑)」。THURIUM立ち上げ時は、少しでもコストを抑えるためにサンプルの服を自分で縫製するなどしてなんとか乗り越えたといいます。

そうして2シーズン目に入り、合同展示会に出展したときのこと。さまざま企業やバイヤーが訪れる販路拡大のきっかけになる場で新たな出会いがあり、少しずつ売上が伸びて他社にも知ってもらえる機会が増え、少しずつブランドが成長していきました。

そして、縁あって株式会社ニコルの展開するカジュアルフェミニンを主体とした老舗ブランド「BOUTIQUE nicole(ブティックニコル)」のデザイン依頼をもらい、同社による「旅」をテーマにした女性向けの新ブランド「WALDO(ウォルド)」の立ち上げを任され、コンセプトづくりから服づくりまでを行っています。

自身のブランド展開だけではなく、老舗ブランドのファンの心を掴むデザイナーとして、ブランドの思いをカタチにする活動もしながら、及川さんは活躍の場を拡げています。


Interviewer Akki/Writer Asuka/Photographer Daiki


ーaboveu BUYー

【2020 Spring/Summer】

【2020 Autumn/Winter】 

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